第1章『ウニ・ククドゥール』
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第1章『ウニ・ククドゥール』
第3話「ウニとフランソワ」
ウニは天才である。天然ボケにもかかわらず、想像を絶する戦略を用意していた。
「生命を一切奪わない軍隊」の開発を命じたのだ。
目的は謎であるが、絶対王政である。作らねばならない。
ククドゥール王国(帝国本体)バイオ総合研究部とコミネ王国宇宙造船部などによる開発はウニを中心に瞬く間にプロジェクトが進行した。衛星イオの総力を結集した、とんでもない計画である。
あの日、フランソワはウニに呼ばれ、とある湖にやってきた。
二人で船に乗った。ウニが操舵すると言い張り、数分。なかなか出発しないので変だなと思ったら、ウニは船がこげなかったのである。フランソワは苦笑しながら船を漕いであげた。
二人は小船に乗って湖の中心へと向かった。
ちょうど真ん中あたりにつくと、ウニは神妙な面持ちで語った。
「これより私は艦隊を率いて、木星へ向かいます。国の一切と、お父様と皇帝陛下は任せましたよ」
「私はまだ若く、なにをすればよいのかわかりません」
「いつもどおりで構いませんよ。国民のために生きるのです。国の役に立てばみんなが助けてくれます」
「ウニ様」
「貴女には見せてあげましょう。歴史の1ページを」
ウニが視線を遠くに移すとフランソワもそれにならった。視線の彼方には、湖に流れ込む川がある。山から直接流れ込むせせらぎだ。あんなに、あんなにも浅い川なのに、なにか大きめのものが、どんぶらっこっこ、どんぶらこっこと流れてくる。卵の形をした・・・なんだろう?脱出ポッドのようななにかが、湖に流れてきた。静かに船のそばまでたまごは流れ着いてきた。
「ウニ様。これは」
「これはぴよです。」
「ぴよ?」
「生命ある全てに捧げる、私なりの挑戦です。」
「言っている意味がよくわかりません」
「だからー。これで、木星をね。ふふふふふ。」
「え、ちょ。」
「これよりククドゥール帝国コミネ王国国王ウニは帝国軍ぴよ艦隊の提督として任務に就きます。国をよろしくお願いします。副王」
「ウニ様!!」
たまごはぱっかりと開いた。ウニはざざっと乗り込んだ。フランソワはウニが飛んだおかげで揺れる小船から動けなかった。
「すぐに連絡します。放送局でおまちなさい。あと、すぐに岸に戻って」
フランソワはククドゥールネットワークスの社長である。会社にいろ、と。
たまごのふたが閉まり、ゆっくりと沈んでいく。沈んでるけどどうしようと思ったが、岸に戻れとの指示を守った。静かな湖。しかし、変な存在感がある気がする。少なくとも従姉が一緒に沈んでいる。
湖畔で、湖を見渡した。船の痕を消すかのように、中央から地味に波紋が広がっている。・・・それは次第に激しくなっていった。急に水面がくぼんだかと思うと、巨大な何かが飛び出した。
「ぴーよ!ぴーよ!」
ひよこの鳴き声とともに、家ぐらいの大きさのひよこ・・・いや、ひよこの形をした宇宙船?が飛び出した。これが・・・ぴよ?
湖上空に静止したのち、真上を向いた。ぴよは低い低いイオの空を、全速力で突き抜けていった。
これがぴよの出港である。
『宇宙戦艦ぴよぴよ 〜皇女の復讐〜』
第1章『ウニ・ククドゥール』
第3話「ウニとフランソワ」→第4話「イオ」
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