2007年04月14日

電波塔物語『風の中の少女』第三場

電波塔物語『風の中の少女』

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公式ページ 電波塔物語第三「風の中の少女」電波塔物語『風の中の少女』第三場

  照明入る。博士らうとウーダ、シェリーがいる。

博士い  つまり、これが生薬からつくった薬というやつだね。
博士あ  化け学の完成を待たなくとも、こういう最短距離もあるのだね。
ウーダ  ウルグミレッデ、いやウルグミレッデの茎からとった成分です。即効性はないと思いますが、確実に効き目はあるはずです。
シェリー これで娘は治るのね。
ウーダ  ええ、きっと。
博士あ  では、さっそく。
ウーダ  はい。

  博士らとウーダ、去る。

シェリー やっとできたお薬を娘は飲む。娘はもうろうとした意識から戻ってこられるのでしょうか・・・ああ、まだ不安は残るわ。物事がうまく行くときのあの手応えがない。何か物足りないというのでしょう、この胸騒ぎを、誰か何とかして下さい。ユウナの笑顔をもう一度見させて下さい。

  少しして、ウーダが帰ってくる。

ウーダ  シェリーさん。後は待つだけです。
シェリー そうね。ウーダ君、体は大丈夫?もう何日も休みなしだけど。
ウーダ  そういえば。はは。なんか疲れが・・・ベッド、どっちでしたっけ。ちゃんと布団で・・・寝たい・・・
シェリー ウーダ君?・・・まあ。

  ウーダ、寝ている。
  シェリー、一度去り、毛布を取ってくる。ウーダに被せる。

シェリー おやすみなさい。

  シェリー、去る。

  照明が変化する。
  少女が現れる。ウーダをつっつく。

少女   寝てんの?もしかして。夢ん中なのにすごいねえ。・・・へえ、こういう寝顔してんだあ。カワイイ・・・へへ。ウーダ君。木田君。圭介くーん。おお、全然起きないねえこーんなことしても。こおおおおんなことしても。っっほほう。うり、うりうり。かわいいい。・・・あれえ、わたし仕事。どーしよ。まあいいか、起きないし。

  少女、ぽつーん。

少女   ・・・暇さ。・・・暇だよ・・・おい!退屈だ。起きろ圭介。・・・っち。起きやしねえ。もお、誰も気がきかないなあ。女の子が暇人してんだぞ。仕事ができないからだけど・・・起きてー!ここ夢ん中ああ。寝るとこじゃないい。あーん、つまんないよう。仕事させてよー。伝言あんだよー。・・・お。今、ぴくっとした?よし!いまだ、まどろめ!・・・ウーダああああ。・・・あ、ちょっと、もしかして。

  照明、ぱっと変わる。
  ウーダ、むくっと起きる。

少女   あーあ。夢通り越して、即起きちゃった。もおー。

  少女、舞台端のほうへ駆けていく。当分、見えるところで暇人。
  博士うが入ってくる。

博士う  ウーダ君!これじゃ!
ウーダ  え?

  博士う、変なジェスチャー。

ウーダ  まあるい?違う?・・・大きい?ああ、大きい?あ、合ってる?・・・ハートお?違う?・・・お尻?違う。・・・愛?ああ、愛。・・・大きい愛?大きい愛・・・あきあい・・・オッキイアイ・・・オキナイ?
博士う  そう!
ウーダ  起きない。・・・何がですか。
博士う  どうだ?大きい愛と起きない!
ウーダ  それはいいとして。
博士う  しゅーん。
ウーダ  ・・・ユウナさん、起きないですか?
博士う  ・・・コホン・・・ああ、意識が完全に途絶えている、何も反応しない。
ウーダ  そんな。だってちゃんと薬飲んだんじゃないですか。ぼうっとしてたけど。
博士う  間に合わなかったんじゃろ。残念だが。
ウーダ  まさか。何で。嘘だ・・・諦めませんよ僕は。
博士う  とりあえず、落ちついてくれ。我々でも原因はわからん。薬がどうやって作用したのかもさっぱりだ。
ウーダ  危ないんですか。
博士う  もう時間切れだ、もはや、我々にはどうしようもない。
ウーダ  シェリーさんは!
博士う  気を失っている。あの人が一番つらいはずだ。とにかく起きた途端、自殺されても困る。一応、監視はつけた。
ウーダ  賢明な判断です。・・・ユウナさんは本とにもう駄目なんですか。薬は効かなかったんですか。
博士う  体にしみ渡ったのは確かじゃ、しかし、作用した様子がない。
ウーダ  まさか分解されてないのか・・・分解?
博士う  もう時間がない。手は尽くした。
ウーダ  ちょっと、待ってください。
博士う  ・・・
ウーダ  ・・・体に入っている。作用してない。・・・分解も合成もされていない・・・え?・・・そうか!そうだ!そうなんだ!
博士う  どうしたんじゃ。
ウーダ  ここから一番近い花畑はどこですか。あと、電話を二つ用意して下さい。あ、僕が一つ持っているから、ひとつ用意してください。
博士う  この裏の山になっているところが花畑じゃ・・・何をするんじゃ。
ウーダ  ユウナさんを花畑へ!
博士う  何を馬鹿なことを。患者を表に出すなど。
ウーダ  考えがあるんです。
博士う  薬はうまくいかなかったじゃろ。
ウーダ  今度はうまく行くんです。

  博士あと博士いが来る。シェリーもいる。

博士あ  どうしたんじゃ。
博士う  ユウナを花畑へ連れて行くと。
博士い  なんてことを。
博士あ  ウーダ君。もう時間切れなんだ。患者をそうっとしておいてやれ。
ウーダ  何で、諦めるんですか。少ないけど時間はあるんですよね。
博士あ  もういいんだウーダ君!我々の科学も君の薬も効果がなかった。これ以上何もしてやれん。
シェリー いいのよ、ウーダ君。娘を、ユウナを静かに寝かせてやって。
ウーダ  嫌です!僕は最後まで諦めない!今ここで諦めたら絶対後悔します。
博士い  そういうのを悪あがきと言うんだ!
ウーダ  悪あがきでいいんです!僕は・・・ユウナさんとまた話がしたい!

  窓から突風!

博士い  外は風だ!そんな所にユウナちゃんをさらすわけにはいかない。
ウーダ  ・・・

  ウーダ、少女をじっと見る。少女、さっと去る。

ウーダ  確信があるんです。
博士あ  どこを見ている。
ウーダ  ユウナさんを花畑へ!電話も一つ用意。
博士あ  人の話を聞いているのか!
ウーダ  ・・・誰もやらないなら僕だけでやります。

  ウーダ、駆けて去る。各自、呼び止めようと叫ぶ。

  暗転。
  強い風の音。
  照明入ると、花畑。薄暗く、弱い嵐の様相。
  ウーダがいる。そしてベッドに横たわるユウナ。

  博士らとシェリーが入ってくる。
  ウーダ、携帯電話をひとつ、ユウナの傍らに置く。
  ウーダ、ベッドから離れる。

  客席方向に恐らく電波塔がある。ウーダ、意識を電波塔に向ける。
  皆、もはや静かに見守っている。
  ウーダ、自分の携帯を取り出し、電話をかける。
  やがてユウナの傍らで電話が鳴る。
  同時に電波ABCDE駆けてくる。

  電波ABCが3人で手をつなぎ回転。
  電波DEが2人で手をつなぎ回転するが、一人分バランスが悪い。

  少女、入ってくる。
  皆、少女を見つめている。
  少女、電波DEと手をつなぎ回転。
  2対の回転がベッドの回りでさらに回転。
  少女、ウーダを気にしながら回転に参加している。
  ウーダ、ただただ電話の呼び出し音を聞いている。

  ウーダ、少女を見る。
  ウーダと少女、見つめ合う。
  少女、回転から抜け、ベッドの傍らにつく。
  ウーダ、頷く。少女、ユウナの側へ。

少女   ユウナ。起きなきゃ。自分で。ウーダ君に言いなさい。・・・私に言わせないで・・・

  少女、ウーダを見る。ウーダ、頷く。

少女   いつの間に気づいたの。私の仕事。
ウーダ  つい さっき・・・
少女   そっか・・・
ウーダ  この意味がわかった?

  皆、何かしら反応。だが、喋らない。
  ユウナ、上半身を起こす。少女が支える。

ウーダ  僕は受験の直前に引っ越しをした。ユウナさんのお父さんは亡くなったのも、その頃だ。
ユウナ  7年前ね。
ウーダ  君は、祈るのをやめてしまった。
ユウナ  そうよ。
ウーダ  雪の女の子はお迎えが来て会えなくなった頃だ。
少女   ええ。そうね。
ウーダ  僕は薬学部に入り。やがて卒業し、会社に入ったけど、研究室には配属されなかった。
少女   気づけば普通のサラリーマンになっていた。
ユウナ  そして、この世界に来た。
ウーダ  ユウナさんと出会い。なんとかここでの生活にも馴染んだ。
少女   ユウナちゃんが発病。ウーダ君、薬を作るのは夢だった。
ウーダ  いつから、薬に興味を持ったんだろう。
少女   雪のなかで女の子と遊びながら。
ウーダ  いつの間にかその夢を持った。自覚したのは
ユウナ  7年前。私が祈らなくなった頃。
ウーダ  君の祈りは二つ。
少女   病気を治して下さい。
ユウナ  誰がずっと側にいて。
ウーダ  それが僕の夢になり、希望になり、やがて強い思いになってここへ来た。
ユウナ  ウーダ君。ごめんね。
ウーダ  いいや。・・・待ってたんだね。
ユウナ  ウーダ君。有り難う。

  ウーダ、ユウナの側へ。

ウーダ  祈って。
ユウナ  私の病気を治して、それから、側にいてくれる人を!
少女   その願い
ウーダ  叶えよう。

  ウーダ、ユウナを抱きしめる。
  二人、少女を見る。

少女   よかったね。
ユウナ  うん。

  少女、ベッドの携帯をユウナに持たせる。
  ユウナ、鳴っている電話の通話ボタンを押す。
  電話の呼び出し音が止まる。エンディング曲入る。
  電波ABCDE、からまりながら、風向きの方向へ去る。
  少女、ベッドから離れ、下手に立つ。

シェリー ユウナ・・・
ユウナ  ママ。

  シェリー、ベッドに駆けていき、ユウナとウーダを抱きしめる。
  博士ら、下手の少女へ各自のスタイルで敬礼。


  風が弱くなる。
  空が晴れてくる。照明、ホリ青、サス橙、ピン白。少女狙い。
  少女、風を浴びながら遠くを見ている。
  曲、大きくなる。
  歌声と、クスクス笑い。
  幕、下りる

(電波塔物語『風の中の少女』第3場おわり)
風の中の少女・おわり

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posted by 御堂鈴音 at 11:53| ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 電波塔物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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